猫ミーと犬エスの関係 |
僕が5歳の頃のお話です。 笑える話ではありませんので、暇な方だけお付き合い下さい。 家に土間というものがありました。 土間というのはおうちの中にある廊下で、 靴を履いたままで奥の台所まで続く長い玄関のようなものです。 ここは土でできているのですが、打ち固められ真っ黒で硬い。 土でできているのに、少しくらいは裸足で歩いても足が汚れるわけでもありません。 乾いてほこりが立つわけでも無く、いつもしっとりとした黒い穏やかな平面が静かに存在します。 犬小屋もこの土間にあります。ある日犬のエスが僕を呼びました。ちょっと来いと言うのです。僕は小さい頃犬と話すことができました。今はできませんが犬の思っていることは大体分かりました。誰でも幼い頃は出来たはずで、もう忘れてしまっただけです。 あっ!別に不思議な話をするつもりはありません。完全な思い出話です。横道にそれましたが、犬が何かを見つけたので来いと言うのです。仕方なく犬の後について、道路の向こうの畑に行きました。小雨が降って寒い時期でした。収穫が終わって、茶色くなりかけた葉っぱの下に、ミーミーと鳴く黄色い虎縞の子猫を見つけました。どうやら捨て猫のようでプルプル震えて可愛そうでした。 さて子猫はミーと名付けられ、おもに犬小屋の中にいました。僕の家は凄く貧乏で猫にあげるミルクがありません。兄貴は虚弱体質で特別に牛乳が毎日届きました。こいつをかすめとりました。当時はふたにニップルが付いていなかったので、待ち針を使って紙の丸いふたを開け、子猫の飲む分を御皿にとり、減った分は水を入れてごまかしたのです。事は順調に進み子猫も大きくなり、ミルクがもっと欲しいと鳴かれ、仕方ないので飲みたいだけ飲ませたら、牛乳ビン3分の1ほど飲んじゃったのです。これはヤバイと思い水の他に砂糖を少し入れました。でバレました。薄めるだけならよかったんだと思いますが幼稚園児のやることです。だけどもう煮干し等も食べれるようになつていたので、もう大丈夫。 ミーはとてもとても大きくなり、風格すら出てきました。近所の七輪の上の焼いている秋刀魚を盗んだり、塀の上からジャンプして、地面で遊んでいるスズメを捕まえたりしていました。 ミーが帰ってくると、まず犬小屋に向かいます。不思議な気がして、ある日隠れて見張りました。ミーは犬小屋の入り口で寝ている犬のエスに、頭を摺り寄せています。エスはべろりんとミーの顔をなめました。ミーは安心して、何も無かったように、上がりかまちを軽く駆け上がり、家族が集まるところに向かいました。ミーはもう人間に甘えません。少なくとも僕や家族に頭をこすり付けるようなことは無いのです。 僕は幼い頃、猫と犬は仲がいいものだと信じていました。 (2009.11.13[Fri]) |
バックナンバー